九月の恋と出会うまで (2019):映画短評
九月の恋と出会うまで (2019)ライター2人の平均評価: 2.5
ファンタジーこそ根源的なリアリズムが必要不可欠
主人公たちの暮らす西洋風お洒落アパートの住人が、大家の意向で芸術家&芸術家志望ばかりなのは分かるにしても、さすがにパリの芸術サロンのごとく中庭でクラシックの演奏会ってあなた、浮世離れし過ぎて話が全然入ってこないんですけど!という前途多難なオープニングに頭を抱えつつも、時空のねじれが生み出す恋愛ミステリー的な前半のストーリー展開はなかなか面白い。ただし、タイムパラドックスが生じた辺りから徐々に失速し始め、駆け足で強引にオチをつけたような結末も盛り上がりに欠ける。やはり人間ドラマの真実味はファンタジーにこそ必要不可欠。主演の高橋一生と川口春奈の爽やかな持ち味にだいぶ救われているという印象だ。
恐ろしいほど高橋一生、無双映画
初主演映画『MEATBALL MACHINE』とは、もはや別人。恐ろしいほど高橋一生、無双映画である。くしゃくパーマに、キレカジ(死語)ファッション。コロコロと表情を変えながら、喜怒哀楽を魅せ、おなじみの低音ボイスで、とてつもない不器用キャラを演じるのだ。『イルマーレ』風で幕を開けるタイムパラドックスが引き起こす恋愛劇は、『ぼくは明日、昨日のきみとデートする』に近いアンチ激情型だが、あまりに説明不足すぎて、どうも説得力に欠ける。だが、高橋の存在は、それすら煙に巻いてしまう。そのため、助演陣など、まったく印象に残らないが、Andropの主題歌は、しっかり彼に寄り添って後押ししている。