ボリショイ・バレエ 2人のスワン (2017):映画短評
ボリショイ・バレエ 2人のスワン (2017)ライター2人の平均評価: 3
昔の少女マンガみたいに清く正しく美しい
いい意味で、大昔の少女マンガの趣。バレリーナを目指す、貧しい少女と金持ちのお嬢さま。幼い頃は意識しないが、成長とともにその格差が2人にさまざまな影を落とす。2人はライバルとして火花を散らすが、どちらも根は悪い子ではなく、次第に友情を育んでいく。さすがに異性との交際ぶりは現代的だが、基本的には昔ながらの清く正しく美しい乙女たちの友情の物語。そんな今となっては希少価値のストーリーが清々しい。
加えて、ダンス自体が心地よい。それは、登場人物を実際のバレエダンサーたちが演じているから。登場人物たちがスクールで練習するシーンも、ストーリーとは別に、彼女たちの動きを見ているだけで気持ちいい。
バレエ漫画っぽい世界を、超本格テクで実写化すると…
バレエに限らず、スポーツなど世界トップクラスの肉体を描く場合、キャスティングでプロレベルの肉体を優先するか、演技力や知名度を優先するかは悩ましい。今作は前者を選択し、成功したと言えそう。
物語は、ちょっとだけ「ガラスの仮面」も頭をよぎる教師と生徒の関係やライバル対決、主人公の貧乏な家など、妙に懐かしの漫画の世界。お酒飲みながらフェッテ(片方の脚での連続回転)を競い合う若きダンサーたちの日常も、やや過剰なノリだが、そこが嘘くさくならないのは、出演者たちの堅実なテクニックゆえ。ステージのシーンで、全く別のBGMにする暴挙的演出に目をつぶれば、全体にバレエファンの納得のいく仕上がりにはなっている。