悲しみに、こんにちは (2017):映画短評
悲しみに、こんにちは (2017)地元の記憶を新鮮な芝居でことこと煮る
田舎でのひと夏のスケッチという定型の枠組みながら、ひと口含めば違いがじんわり染みる絶品料理みたいな傑作。ラフなダラ撮りに流れず、盛り上げの公式も使わず、「演出×記録」の丁寧な醸成。その中で肉親の喪失に直面した少女の未分化な感情を掬っていく。
新人監督カルラ・シモン(1986年生まれ)の実体験を反映した93年のカタルーニャという時代設定に、「新しい病気」が歴史的な痛みと奥行きをもたらす。やがて少女は楽しい時間のあいだ、急に泣き出す。彼女の「わかんない」という一言が、ものすごくわかる。作家の記憶を対象化した目線と、演者の肉体が融合した奇跡の描写。まさにオーガニック・スタイルの映画の醍醐味!
この短評にはネタバレを含んでいます