マイ・サンシャイン (2017):映画短評
マイ・サンシャイン (2017)ライター3人の平均評価: 3.3
27年前のロサンゼルス暴動を通して世界の今を考察する
ロドニー・キング事件などで全米世論が揺れる’91年のロサンゼルスを舞台に、貧困地区で恵まれない子供たちを引き取って育てる女性の日常に焦点を当てつつ、ロサンゼルス暴動の背景にあった差別や貧困の問題を炙り出していく。興味深いのは、これをフランス育ちのトルコ人女性監督がフランスの資本で撮っているという点だ。アメリカと同様に深刻な移民問題や人種問題を抱えたフランス。その波は今や世界中へと広がり、日本とて他人事ではない事態となりつつある。ロサンゼルス暴動は決して過去の終わった事件ではない。それがこの映画の本質的な視点だ。ただ、そのテーマやメッセージをドラマとして上手くまとめきれなかった感は否めない。
暴動に直面したとき、人に何ができるのか⁉
パリで起こった暴動は記憶に新しいが、13年前にもかの地では暴動が起きた。それを実際に体験した『裸足の季節』のD・ガムゼ・エルギヴェン監督が1992年のLA暴動に注目して本作を製作。
ひと口に暴動と言っても、そこには多彩な要素がある。ある者は心の底から怒り、ある者は怒りを略奪に転嫁し、またある者はそれに刺激を受けて略奪に執着する。そのような構図の俯瞰に本作の意義がある。
しかし、多くの人間は暴動そのものから距離を置くものだ。H・ベリーやD・クレイグがふんする主人公はその典型。彼らの間に芽生える人と人のつながりに、非常時でも正気を保とうとする美しさを見た。社会派だが感動的な人間ドラマ。
紛れもなく『裸足の季節』監督最新作
手堅いキャスティングに、ほのぼのなタイトルと、食指が動かないかもしれないが、紛れもなく『裸足の季節』でド肝を抜いた女性監督の最新作である。ある意味『万引き家族』である子供たちの描き方が、今回も腹立つほどに巧い。そこにダニエル・クレイグ演じる、かなりヤバい隣人が怒鳴り込む。恋愛に奥手な長男が憧れのコを寝取られたり、いろいろヤバいことが起こりまくった末、ロス暴動が勃発。巧くいけば、少年版『ドゥ・ザ・ライト・シング』になるのに、そこに大人のロマンスが入って浮きまくるなど、噛み合わせの悪さが面白いことになっている。しかも、大風呂敷広げて、87分という尺も、かなり攻めている。