映画 賭ケグルイ (2019):映画短評
映画 賭ケグルイ (2019)ライター3人の平均評価: 3.3
弱肉強食な日本社会の縮図的な一面も
ギャンブルの勝敗によって学内の階級ヒエラルキーが決まるという、富裕層御用達の私立学園を舞台に、賭け狂いの転校生・蛇喰夢子が波乱を巻き起こす。基本設定が非常に分かりやすいので、とりあえず原作もアニメ版もドラマ版も見なくてオッケー。オリジナルストーリーを採用した劇場版は、夢子VS生徒会の対立構造に非ギャンブルを掲げる第三勢力が加わる。荒唐無稽といえば荒唐無稽な話だが、上級国民なるパワーワードが流行る昨今、奇しくもタイムリーな印象を受けないでもないし、弱肉強食が日々加速する日本社会の縮図的な一面も見え隠れする。俳優陣の過剰なオーバーアクトは気になるが、まあ、そもそもが非現実的な作品だしね。
劇場版ならではの趣向を凝らした演出に高まる!
『バトル・ロワイアル 鎮魂歌』のように、シリーズものに第三勢力となるレジスタンスが登場すると、ヤバい仕上がりになりがちだが、それを見事に打ち破った劇場版。そんな名称から衣裳までシャマラン映画まんまの“ヴィレッジ”の存在やら、ハンス・ジマー風な劇伴やら、随所にハリウッド大作を意識したケレン味ある演出が用意。また、キャストの顔芸炸裂のギャンブルシーンはルールの分かりやすさ重視で、オリジナルならではのタッグ戦から、ただでさえ濃ゆいキャラの魅力が際立つなど、一見さんにも優しい作りだ。「10年続ける!」と断言した英勉監督だけに、キラキラ映画とは違う本気度が伝わってくる!
浜辺美波、恐るべし!
原作もTVシリーズも見ずに臨んだが、ギャンブルがすべてのエリート学園という設定は面白く見た。ゲームの多彩なルールもスリリングで目を見張る。
残念なのは登場人物の誰にも感情移入できないこと。森川葵ふんする女生徒の秘めたガッツに期待したものの、早々にフェードアウト。男キャラは総じて騒々しい。TVシリーズのファン向けと思えば、どのキャラの個性が強い分、少々もったいなかったか。
とはいえ若手俳優たちは、それぞれの仕事をきちっとこなした印象。主演の浜辺美波は麻雀青春映画『咲 -Saki-』の朗らかさとは、うってかわってミステリアスかつ狂気的で、それだけで魅了される。今後の化けっぷりにも期待。