ベン・イズ・バック (2018):映画短評
ベン・イズ・バック (2018)ライター2人の平均評価: 4
依存症のリアルを息子に演じさせた、父監督の心意気が成功
何がきっかけで薬物依存になるのか。依存者に対して、家族はどう対処するのか。それが一瞬でも、一人の時間を作らせることに、どんなリスクがあるのか。今作は、そうした依存のリアル要素を、巧みにストーリーに取り込んで、しかも教訓臭くないところが秀逸。息子、母親、それぞれの壮絶かつ、もどかしい心情に寄り添うように観てしまう。
このところ「見守る」母親役として、自我を抑えながら、要所を引き締めるジュリア・ロバーツの表情には感心することが多い。そして息子役、ルーカスの演技は、監督を務めた実父の目線を重ねることで、胸に突き刺さる瞬間が何度もある。「親子」というキーワードが無意識レベルで全編にしみわたっている。
母の愛に心を揺さぶられる
偶然にも、トロント映画祭でほぼ同時にプレミアされた「ビューティフル・ボーイ」と設定が似ているが、こちらは一晩が舞台。スリラー仕立てで、どんどん引き込む。帰ってくるべきではないのに帰ってきたベンを見て、母は喜ぶが、妹と義父は危機感を隠さない。それはなぜなのか、彼は何をやったのか。すべての始まりがあまりに不条理なことには腹立たしさを感じ、そこから抜け出すのがいかに難しいのかには胸が苦しくなる。今最も注目の若手であるルーカス・ヘッジスは今作でも光るが、もっと心を揺さぶるのは母役のジュリア・ロバーツ。最高の映画スターでありつつ真の演技派でもある彼女は、本当にすごいと思う。