劇場版パタリロ! (2019):映画短評
劇場版パタリロ! (2019)ライター3人の平均評価: 3.3
恐らく最もチャレンジングなマンガ実写化のひとつ
これはもう、加藤諒という逸材あってこその実写版と言えるだろう。なんたって、あのパタリロを生身で演じることの出来る役者は、古今東西(?)を見回しても彼以外には考えられまい。基本的には舞台ミュージカル版の映画化。ゲキ×シネ的な舞台風の演出をベースにしつつ、クレイジーなVFXや屋外ロケをたっぷりと交えることで、それなりに映画的な広がりも見せてくれる。とはいっても、ハリウッドばりのスケールを期待しちゃいけません。良く言えばキッチュ、悪く言えばチープ。まあ、この場末的なゴージャス感…というかケバケバしさがパタリロらしいと言えるかも。下世話でオフビートな悪ノリ・ギャグも満載。
楽しんだ者勝ち!
ぶっちゃけ、2.5次元ミュージカルとして上演された舞台版1作目の映像化である。とはいえ、白組による無駄に派手なCGなど、映画的な趣向を凝らした演出も盛り込まれ、ライブビューイングとは違う仕上がりに。メジャーキャストで固めた『翔んで埼玉』に比べて、ミュージカルということもあり、ブッ飛んだ魔夜峰央ワールドに没入しにくいかもしれない。ただ、ハマり役となった加藤諒の「これしきのジェネレーションギャップに戸惑ってたら、ここから先は理解不能!」といった冒頭の口上が語るように、まさに楽しんだ者勝ち。それにより、おなじみ「クックロビン音頭」が流れる頃には、濃ゆいキャラにハマってることだろう。
日本のミュージカル映画も、このノリならOKでは?
魔夜峰央の原作から2.5次元ミュージカルを経て、今回の映画版という流れを考えると、じつに真っ当な作り。日本映画で歌って踊るミュージカルは、観ていて照れ臭さも伴いがちだが、今作の場合、キャラも演技も徹底して過剰にケレン味満点なので、宝塚の世界かと錯覚するほどの「自然さ」で迫ってくる。セットのチープ感も逆に作り物らしさを象徴し、現実逃避させてくれるのだ。まぁ舞台作品を観ている感じだが、映画としてアングルや編集も的確……と、マジメに解説するのが野暮なほど、いい意味でのアホらしさを、全キャストが全身全霊、異様な役になりきって楽しそうに体現しているので、観ているこちらも、つい前のめりになるのであった。