任侠学園 (2019):映画短評
任侠学園 (2019)ライター3人の平均評価: 3
昭和のヤクザ映画のDNAを継承する任侠コメディ
義理人情に厚い心優しき弱小ヤクザ集団が、経営不振の私立高校を悪徳企業から守って建て直し、思春期の迷える学生たちを応援していくという任侠コメディ。まあ、反社会勢力を美化するのもいかがなもんかとは思いつつ、堅気の偉い人たちがヤクザまがいの悪事を働いてもお咎めなしの昨今、こういう一本筋の通った昔気質の渡世人が弱者の味方をしてくれたら心強いのに…という庶民の願望を含めたファンタジーとしてはアリだろう。また、居場所を求めてヤクザの世界へ流れ着いたはぐれ者たちが、巨悪を相手に負け犬の誇りと意地を見せていく浪花節的な物語には、古き良き昭和のヤクザ映画のDNAがきちんと受け継がれている。
今度の伊藤淳史は…死にません
校長=生瀬勝久の流れで、「ごくせん」テイストも感じられるが、実際は「唐獅子株式会社」シリーズに近い原作シリーズ。同じ人情コメディでも『オズランド』に比べ、ムリを感じさせない西島秀俊だが、伊藤淳史演じる弟分との絶妙な絡みは「ダブルフェイス」を思い起こさせるなど、なかなかのハマり役。とはいえ、監督は師である堤幸彦同様、当たり外れが激しい木村ひさし。「名探偵・明智小五郎」に続くジャッキー・オマージュを感じさせるエンドロールなど、小ネタも多いが、どこかフッ切れない演出が災いしてか、なかなか笑いに繋がらず。また、各生徒とのエピソードなど、忙しない印象も強く、連ドラとして観たかった気もする。
西島秀俊の醸し出す笑いと西田敏行の一瞬の凄み
「ストロベリーナイト」や「MOZU」のイメージが強いせいか、ハードボイルドな役どころが回ってくることが大い西島秀俊ですが、この人はもっとコメディをやった方がいい。整い過ぎた外見故に醸し出す笑いが絶妙です。そしてクライマックスで見せる西田敏行の凄み。この人はやっぱりすごいの凄い役者なんだとわかります。明らかに「アウトレイジ」を狙ったキャスティングも含めて良質なコメディになりました。