シンク・オア・スイム イチかバチか俺たちの夢 (2018):映画短評
シンク・オア・スイム イチかバチか俺たちの夢 (2018)ライター3人の平均評価: 2.7
おっさん、ガンバレ!(いろんな意味で)
仏で起こった黄色いベスト運動の胎動が、伝わってくるかのようだ。
地方都市を舞台にした本作。寒々とした色調からも伝わってくる経済不況。
主人公をはじめ登場人物は、競争社会から弾き飛ばされた人たちばかり。
その彼らがまさかのシンクロで鬱屈した日々に風穴を開けようとするのだから、本国で大ヒットも頷ける。
英国で『フル・モンティ』や『ブラス!』が生まれたのと同じ流れだが、
ただ本作が今ひとつラストで胸熱にさせてくれないのは練習シーンが少ないから。
努力する過程を見せてこそのクライマックスでは?
おっさんチームで体力に限界有りだとしても、『ウォーターボーイズ』を知る我々には物足りないのだ。
おっさんずダイブ
うつで引きこもりなマチュー・アマルリックに、バブルの夢を引きずるブノワ・ポールヴールドなど、豪華キャストがもがき苦しむ“おっさん版『ウォーターボーイズ』”。“○と□”をめぐる文学的かつ哲学的な語り口にしんみりしながら、おっさんたちのお世辞にもセクシーとはいえない肉体から醸し出される悲哀、鬼コーチとの対立劇などでしっかり笑わせる。そして、「イージー・ラヴァー」が流れ、否が応でも高まる王道展開に突入。なんだかんだ、娘に叱られながらも、夢を追い続ける長髪ロッカーなジャン=ユーグがカッコよく、「そ、そんな短期間で!?」と思ってしまう展開もご愛敬。とはいえ、120分超えの尺はやっぱり長い。
困り者のオヤジたちがなぜかカワイイ
オープニングの、いろんなグッズをリズムよく並べていく映像がカラフルかつポップで、そこで映画のトーンが決まって、実はその後に出てくる出来事は離婚や鬱病や破産などシリアスだったりもするのに、映画の雰囲気はポップなテイストをキープ。そして笑えたりもするのは、中年オヤジたちのキャラが、みなカワイイから。彼らはそれぞれ難点も弱点も多いのだが、それを隠そうとしていないから見苦しくない。練習の後の更衣室では、まるで男子中学生かと思うようなノリでじゃれ合って和ませてくれるのだ。かつてイケメン役も演じてたフランス男優たち、ジャン=ユーグ・アングラードやギョーム・カネらの味のあるオヤジぶりも見もの。