オーヴァーロード (2018):映画短評
オーヴァーロード (2018)ライター3人の平均評価: 3.7
ノルマンディー、上陸したらナチ・ゾンビ!
ガチの戦争映画と思いきや、ナチス・ゾンビ映画に突入する超展開で、マニア心をくすぐりまくるJ・J・エイブラムス、プロデュース作。2Dなのに、妙に4D感ある冒頭の軍用輸送機の降下(というより墜落)からツカミはOK! その後は『ガンズ&ゴールド』のジュリアス・エイヴァリー監督らしい緩急激しい演出で、思わぬ災難でミッションを遂行できない兵士と同じ不安にかられるのが面白い。親父のアゴを受け継いだカート・ラッセルJr.こと、ワイアット・ラッセルもいいが、『シング・ストリート』のマザコンなギタリスト、マーク・マッケンナや紅一点のマティルド・オリヴィエなど、脇のキャストも魅力的だ。
冷たい大気は湿度が高く、滴る血の粘度は高い
基本は戦争映画の王道の群像劇だが、R指定に納得、ナチスの人体実験の非人間性を際立たせるためか、人体の破損度がかなり高い。人体はとても壊れやすく、変形しやすく、それをCGIよりも特殊メイクを多用した演出で描く。それでいて映像は重厚で陰影豊か。撮影は2人、リブート版「ペット・セメタリー」「ハイ・ライズ」のローリー・ローズと「ジャスティス・リーグ」「ヴィクター・フランケンシュタイン」のファビアン・ワグナー。映像が、北の湿った冷たい大気と、滴り落ちる血液の粘度をたっぷり味あわせてくれる。監督ジュリアス・エイヴァリーはリブート版「フラッシュ・ゴードン」の監督なので要チェック。
ナチス人体実験モノの王道
冒頭、ノルマンディー上陸作戦で連合国側の空挺師団が空中戦に巻き込まれ、ドイツ占領下のフランスの森で緊迫の銃撃へ続くあたりは、戦争映画の醍醐味。しかしこの映画が心をざわめかせるのは、ナチスによる住民の人体実験である。『キャプテン・アメリカ』や『ヘルボーイ』でも、なんとなく描かれた(あるいは連想させた)このトピックを、アクション映画で堂々と見せたことが好感。そのために、ややB級テイストに傾く瞬間もあるのだが、要所では目を疑う衝撃描写で観る者の背筋を正させる。終始、メインキャラの誰が犠牲者になるかわからない不安も漂い、全体のメリハリが効いているのだ。全体の展開は想定内とはいえ、満腹感は得られるはず。