カーマイン・ストリート・ギター (2018):映画短評
カーマイン・ストリート・ギター (2018)ライター2人の平均評価: 4.5
下町の”幸福”が、ここにある
NYのダウンタウンにたたずむ一軒のお店が舞台で、客が次々と訪れる。こちらはドキュメンタリーだが、フィクション『ブルー・イン・ザ・フェイス』にも似た、市井の風景がそこに広がる。
ジャームッシュが出演し、故ルー・リードにも言及するなど、同作とのリンクは多いがサブカル臭は皆無。フラリとやってくる客と、老ギター職人のやりとりを聞いているだけで、ほっこりしてくる。
老ギター職人と金髪25歳・女子弟子の絵的ユーモアもジャームッシュ的だが、80年代の尖ったNYインディーズとは異質。ギターを弾いてみたくなるし、この街に住みたいと感じる。後から次々と温かい場面が思い出される幸福な映像体験だ。
サンクチュアリの営業日記
グリニッジ・ヴィレッジにある、廃木材を再利用して「ヤバいギター」(by店員シンディ)を作っているお店の一週間。店主の名職人リック・ケリーは馴染みの客(大物続々登場)と会話を交わしながら粛々と仕事を続ける。再開発の波に呑まれぬ最後の砦として、この小さなものづくり工房は存在している。
時代の合理化に抗い文化を守る場所。これはほぼ同日に日本公開の『カーライル ニューヨークが恋したホテル』と同じ主題だ。あちらのキーパーソンがウディ・アレンなら、こちらはジム・ジャームッシュ。ゲスト召喚の形式が『コーヒー&シガレッツ』っぽいが、変わらぬ個の暮らしを大切に見つめる視線は最近のジャームッシュ的主題と重なる。