コンプリシティ/優しい共犯 (2018):映画短評
コンプリシティ/優しい共犯 (2018)ライター2人の平均評価: 4
人は絆を求める
技能実習生、不法就労などの今日性・社会性の強い面にまず目が行きますが、根本にあるのはシンプルな絆の物語でした。
それぞれ家族と距離ができてしまった二人の人間、老そば職人と中国人の青年。
この二人が、疑似親子関係を構成していく物語は、とても普遍的で、トロントやベルリン、釜山のと言った海外の映画祭でも評価を集めたことも納得です。
技能実習生問題を背景に描かれる国籍を超えた他者への思いやり
21世紀の徴用工とも呼ばれる技能実習生問題を題材にした作品だが、しかし内容的には社会派映画というよりも、迷える若者の自分探しを軸にした青春ドラマだ。いつまでも人生に目標を見出せず、焦る気持ちからうまい話に騙されて来日した中国人の若者チェン。ブラックな職場を逃げ出すものの、渡航費用を祖母に工面してもらったため手ぶらでは帰れない。金のため犯罪に手を染めてしまった彼は、警察の目を逃れるため他人になりすまし、田舎の蕎麦屋で働くようになるが、そこで出会った老店主の厳しさと優しさに触れ、やがて自らの生き方を見つめ直す。その両者の触れ合いを通して、分断と憎悪の時代に必要な他者への思いやりが描かれるのだ。