黒い司法 0%からの奇跡 (2019)：映画短評

勇気を与えてくれる感動の実話映画。アワードシーズンにも引っかからず、日本公開時もぱっとしないで終わってしまったが、絶対にもっと評価されるべきだった。抗議デモが起こっている今こそ、ぜひ見てほしい。ハーバード出身で、儲けたいならその道に進めたであろう弁護士ブライアン・スティーブンソンは、あえて南部に移り、えん罪で刑務所にいる黒人を助けようとする。その道は険しく、彼自身もまた身の危険にさらされる。それでも強い意志をもって不可能を可能にする彼の姿に、自分たちも言い訳ばかりしていてはいけないのだと考えさせられる。こういった意義ある作品を送り続けるマイケル・B・ジョーダンにも拍手。

　米国の人種的分断の根深さにゲンナリさせられつつも、闘う人々の姿勢にアツいものを覚える。テーマをしっかり見据えた良心的なドラマ。

　1990年代でも人種差別が残っているアラバマ州での、黒人の罪人はすべて死刑という現実。”俺たちは生まれれ付き有罪なんだ”とい黒人死刑囚の言葉が重い。一方で、理想家の若きエリート黒人弁護士の精神的な成長と奔走が描かれ、その熱はドラマとして十分に魅力的だ。

　メッセージ性が強く、それゆえの息苦しさを感じる場面もあるが、それでも現代に語られるべき物語であることに疑問の余地はない。ブラック・アクターたちの熱演もさることながら、B・ラーソンの自然体の演技もイイ。

キルモンガーとキャプテン・マーベルがタッグを組み、1980年代後半に起こったとは思えない冤罪事件に挑む。新たなる『アラバマ物語』ともいえるが、デスティン・ダニエル・クレットン監督作だけに、人種差別をめぐる理不尽すぎる現実をしっかり描きながら、弱者に対する目線はとにかく優しい。一瞬にして空気を変える凄みを放つ証人を演じたティム・ブレイク・ネルソンなど、役者も芸達者揃い。胸を打つようなセリフも多い力作ではあるが、あまりに硬派すぎて、『リチャード・ジュエル』と比べると、モノ足りなさを感じるのも事実。そういう意味でも、監督の次回作となるMCU『シャン・チー』の仕上がりは如何に？