スペンサー・コンフィデンシャル (2020):映画短評
スペンサー・コンフィデンシャル (2020)ライター3人の平均評価: 3.3
バーグ&ウォールバーグ組が明るい映画に初挑戦
実際に起きた悲惨な出来事にもとづく社会派アクションスリラーを作り続けてきたマーク・ウォルバーグとピーター・バーグ監督の名コンビが、今作で大きく気分転換。一応、腐敗という要素も入っているとはいえ、主人公スペンサー(ウォールバーグ)が犯人探しをするエンタメ物だ。アクションもコメディも得意なウォールバーグは、舞台が故郷のボストンというのもプラスして、余裕たっぷりのパフォーマンスを見せる。意外な相棒となるウィンストン・デュークとの相性もユニークで魅力的。だが、今後も多数の作品を送り出していくに違いないバーグ&ウォールバーグ組の代表作には、おそらくならないだろう。
損得より良心に従って行動できるスペンサーに共感!
かつて『私立探偵スペンサー』としてテレビドラマ化もされた人気犯罪小説シリーズの映画化…といっても、こちらは生みの親ロバート・B・パーカーからシリーズを引き継いだエース・アトキンスの小説が原作だ。困った人がいれば助けずにいられない熱血漢で、そのせいで刑務所に入った元警官スペンサーがボクサー志望の巨漢ホークと組んで、かつての同僚である汚職警官グループとギャングの癒着を暴くことになる。全体的には軽いノリのバディ物アクションで、テレビドラマのパイロット版的な印象は否めないものの、日本でも公権力による不正が半ば公然とまかり通る昨今、己の良心に従って行動できる男たちの物語には思わず熱くなる。
ワンコの活躍もポイント。シリーズ化を切望する豪快な仕上がり
正義感は強いけど、カッとなりやすく、すぐに手が出てしまう。格闘能力はハイレベルで、とぼけた人間味もある。これらスペンサー役の魅力、すべてマーク・ウォールバーグのために用意されたようなもの。いや、マークの持ち味が役に息吹を与えたのか。典型的ハマリ役に、冒頭から心をつかまれる感覚だ。
主人公と新たな相棒、老練の友人、元カノらの関係性が、しつこくなくクールに描かれるあたりも好感。要所に登場する犬の役回りも絶妙なアクセントになっている。欲を言えば、P・バーグらしい豪快アクション演出を大画面で楽しみたいのだが…。観終わった後、早くもスペンサーの次の活躍が楽しみになる。エンタメの法則をクリアした逸品。