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赤い闇 スターリンの冷たい大地で (2019):映画短評

赤い闇 スターリンの冷たい大地で (2019)

2020年8月14日公開 118分

赤い闇 スターリンの冷たい大地で
(C) FILM PRODUKCJA - PARKHURST - KINOROB - JONES BOY FILM - KRAKOW FESTIVAL OFFICE - STUDIO PRODUKCYJNE ORKA - KINO SWIAT - SILESIA FILM INSTITUTE IN KATOWICE

ライター3人の平均評価: ★★★★★ ★★★★★ 3

猿渡 由紀

世界がプロパガンダに屈した時代の悲劇

猿渡 由紀 評価: ★★★★★ ★★★★★

1932年から1933年の間にウクライナで飢餓のために死んだ人の数は400万人と推定されているそうだ。スターリンが世界から必死で隠したその事実を、あらゆる困難に直面しながらも告発したイギリス人記者のこの物語は、権力に負けないこと、勇気をもって真実を語ることの大切さを教えてくれる。当時、イギリスのトップの政治家たちがヒトラーを完全に軽視していた状況は、トランプが大統領に立候補した頃のアメリカの受け止め方にも重なり、そこにも警告を見る。ただ、彼の取材が「動物農園」のインスピレーションになったというのは興味深いものの、ジョージ・オーウェルをかなり出してきたことで焦点が薄まった気もしなくはない。

この短評にはネタバレを含んでいます
山縣みどり

フェイク・ニュース問題は昔からあった

山縣みどり 評価: ★★★★★ ★★★★★

30年代にウクライナで起きた悲劇ホロドモールを西側に伝えたジャーナリスト、ガレスの視点で描く実話で、ソ連の監視体制や情報統制をかいくぐって真実を探る主人公の体当たり取材は緊迫感タップリ。子供ばかり残された家での彼の体験は、観ている側もトラウマになるはず。今なお複雑な関係にあるウクライナとロシアの溝の深さもよくわかる。自身に都合の悪い報道を全て、“フェイク・ニュース”で済ませるトランプ大統領とスターリンの共通点にゾッとした。独裁的な国家指導者が増えているのは、耳に心地良いニュースを信じたがる人間が増えているせいもある。インターネットの発展でニュースも増えたから、真偽は自分で吟味せねばね。

この短評にはネタバレを含んでいます
平沢 薫

アグニェシュカ・ホランドの冬が凍てつく

平沢 薫 評価: ★★★★★ ★★★★★

 ウクライナの冬、大気は湿ったまま冷たく、雪原の白さもかすかに青を帯びる。その湿度と冷気を映し出す映像が魅了する。そして、その雪原で幼い子供たちの惨状を見た主人公が、その後、幻視する光景が凄まじい。監督はTV「THE KILLING ~闇に眠る美少女~」でも北の冷気で魅惑した、ポーランド出身のアグニェシュカ・ホランドだ。
 題材は、スターリンのソ連を取材した実在の英国人記者。主人公は「教師になれば平穏な日々が送れるが、数年後に夜中に叫んで目が覚めるだろう」と考えてジャーナリストになる。彼が取材に没入するさまと、作家ジョージ・オーウェルが「動物農場」を執筆する姿を並行して描く演出も興味深い。

この短評にはネタバレを含んでいます
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