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ジオラマボーイ・パノラマガール (2020):映画短評

ジオラマボーイ・パノラマガール (2020)

2020年11月6日公開 105分

ジオラマボーイ・パノラマガール
(C) 2020 岡崎京子/「ジオラマボーイ・パノラマガール」製作委員会

ライター3人の平均評価: ★★★★★ ★★★★★ 3.3

くれい響

“あの頃”の空気も感じる、掴みどころのない面白さ

くれい響 評価: ★★★★★ ★★★★★

掴みどころのない岡崎京子の原作を、掴みどころのない作風が特徴的な瀬田なつき監督が映画化し、掴みどころのない森田望智が演じるお姉さんが引っかき回す。時代設定は2019年ながら、すべてをスマホで解決しないことやサブカル至上主義な渋谷観など、やっぱり90年代に見える“あの頃”のSF感も味わい深い。後半の失速感は否めないが、なぜか映画では陰キャを演じることが多かった山田杏奈の魅力が全編爆発! 表情をコロコロ変え、自由気ままに街を闊歩する彼女を観るだけでも一見の価値アリだが、瀬田監督からの『ホットギミック ガールミーツボーイ』に対する回答と観ると、これまた面白さ倍増!

この短評にはネタバレを含んでいます
斉藤 博昭

岡崎京子の中でこの作品を選んだチャレンジ精神に敬意を

斉藤 博昭 評価: ★★★★★ ★★★★★

『ヘルタースケルター』『リバーズ・エッジ』『チワワちゃん』は鮮烈なテーマや描写が「引き」になったが、この初期作は日常的でドラマチックな度合いは少ない。それゆえ、岡崎京子の作家性、空気感の原点に真摯に迫る大きなチャレンジ。各人物の時に唐突な揺れる思いに“寄り添いたい”人は強く感応するのでは?
一応、舞台を東京五輪の準備が進む現代に移しつつ、スマホの使用は最低限にとどめ、小沢健二、村上春樹、LPレコード、パルコやスペイン坂などで観客を80年代的ムードに浸らせる。演技やファッションも、どこかノスタルジックな趣。岡崎の時代を先取りしたような恋愛関係を、現在に橋渡しする作り手の意図は存分に伝わってくる。

この短評にはネタバレを含んでいます
平沢 薫

岡崎京子のTOKYOがたっぷり詰まってる

平沢 薫 評価: ★★★★★ ★★★★★

 岡崎京子のコミックを映画化するときの難しさは、彼女の作品の魅力のひとつである"時代性"をどのように取り入れるかにあるのではないか。この映画は、そこを思い切って切り捨てて、"初めて恋をする気持ち"という岡崎作品の持つ普遍的な魅力を抽出してみせる。その作戦は成功で、日常会話に「不埒な」などの文語系死語を多用して自分ツッコミするような女子高生たちの恋する気持ちがみずみずしく、眩しい。映像の明度は高いが彩度は低い色調も、この物語に相応しい。それでいて、映し出されるさまざまな都市の光景は明らかに、岡崎のコミック同様に白地が多い、東京ではないTOKYOのもの。岡崎京子のTOKYOがたっぷり詰まっている。

この短評にはネタバレを含んでいます
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