過去はいつも新しく、未来はつねに懐かしい 写真家 森山大道 (2021):映画短評
過去はいつも新しく、未来はつねに懐かしい 写真家 森山大道 (2021)常に「いま」と共に生きる路上の偉人
素晴らしい充実度。森山大道のデビュー作『にっぽん劇場写真帖』(68年)を復活させる企画の仕掛け人、造本家・町口覚&編集者・神林豊が最高のバイプレーヤーとなる。北海道での伐採から始まるフェティッシュな情熱に満ちた「本作り」の過程を軸に、偉大な写真家の歴史と現在が絡む。監督の岩間玄は96年に『美の世界』で57歳の森山を撮っている。当時の彼と撮影時80歳の森山は何も変わらない。「新宿名物」のごとくカメラを手に今日も街を歩く。
構成が抜群。森山の写真論的な変遷や、親友・中平卓馬との関係などアーティスト理解にも役立つ。中平から譲り受けたケルアックの『オン・ザ・ロード』Tシャツは永遠の同志の証だ。
この短評にはネタバレを含んでいます