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この世の果て、数多の終焉 (2018):映画短評

この世の果て、数多の終焉 (2018)

2020年8月15日公開 103分

この世の果て、数多の終焉
(C) 2017 Les films du Worso-Les Armateurs-Orange Studio-Score Pictures-Rectangle Productions-Arena Films-Arches Films-Cinefeel 1- Same Player- Pan Europeenne- Move Movie- Ce Qui Me Meut

ライター3人の平均評価: ★★★★★ ★★★★★ 3.7

なかざわひでゆき

復讐に突き動かされた男と戦争の狂気

なかざわひでゆき 評価: ★★★★★ ★★★★★

 太平洋戦争末期の仏領インドシナ(現ベトナム)。日本軍による大量虐殺(実際に酷似した事件が起きている)で大切な兄夫婦を失い、自らも命からがら生き残ったフランス軍の若き兵士が、日帝の残虐行為を見て見ぬふりしたベトナム解放軍将校への復讐に執着していく。植民地主義によって他国を強制占領した側が、蹂躙された民族のリーダーに恨みを抱くという矛盾。復讐という破壊的な欲求に突き動かされた男が、同時に現地女性への報われぬ愛に身を焦がすという矛盾。そうした幾つもの矛盾の中から、人間の理性を失わせて野獣のように変えてしまう戦争の狂気を炙り出していく。戦時下における人間心理のメカニズムに迫る映画として秀逸。

この短評にはネタバレを含んでいます
猿渡 由紀

フランス版「地獄の黙示録」

猿渡 由紀 評価: ★★★★★ ★★★★★

1945年とその直前についての映画は数多くあるものの、これは、これまでほとんどビッグスクリーンで扱われなかった場所の状況を語る。主人公の不幸は、日本軍によってもたらされたもの。だが、彼はそれについて何もしなかったベトナム解放軍の将校ヴォー・ビン・イェンへの復讐に燃える。そのためにあえて現地に残るのだが、それには果たして価値があるのか?映画は、繰り返される悲劇の意味のなさ、現地にいる兵士たちの疲弊と混沌を、躊躇することなく残酷に描写していく。反戦争のメッセージが、いかにもな感じではなく、あくまで個人的体験という目線で語られるのは効果的だ。

この短評にはネタバレを含んでいます
平沢 薫

熱帯の密林がどこまでも青く冷たい

平沢 薫 評価: ★★★★★ ★★★★★

 映し出されるのは植物が繁茂する熱帯の密林なのに、色彩は常に冷たく蒼ざめている。主人公の心理が凍り付いているために、世界は彼の目にそのように映るのだ。
 戦争映画というよりは極限状況に陥った人間の心理ドラマ。フランス人の主人公にとって、旧フランス領インドシナでの戦争体験は、異なる自然、まったくの異文化との遭遇だった。価値観を見失い、帰る場所もない主人公は、自分が生きている理由を見つけあぐねて、敵への復讐に執着する。しかし、するとその執着のせいで、自分が何を求めているのかがさらに分からなくなる。得体の知れない密林が生きることの謎のように立ちはだかり、主人公はただ途方に暮れるしかない。

この短評にはネタバレを含んでいます
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