護られなかった者たちへ (2021):映画短評
護られなかった者たちへ (2021)ライター3人の平均評価: 4
弱者に冷酷な日本社会の在り方に疑問を呈す猟奇犯罪サスペンス
東日本大震災から10年後の東北・仙台で、奇妙な手口の連続殺人事件が発生。捜査を担当するのは震災時に津波で妻子を失ったベテラン刑事。やがて、事件の背後に社会から見放された被災者たちの怒りと哀しみが浮かび上がり、刑事もまた複雑な感情に心をかき乱されていく。公助よりも自助を求めて弱者を冷たく突き放す行政、他人の悲劇すらも消費して簡単に忘れ去る大衆、そして名ばかりの復興で置き去りにされた被災者たち。猟奇犯罪サスペンスの形を借りながら、現代日本社会の在り方に強く疑問を呈す。阿部寛の円熟もさることながら、『るろうに剣心』シリーズを完成させた佐藤健の、役者としての着実な成長を感じさせる熱演が見ものだ。
瀬々敬久監督作らしい力技を感じる
未だ傷が癒えることのない東日本大震災と、深刻な生活保護受給問題。そこを軸にして、連続殺人事件が絡んでくるという、かなりヘヴィな社会派サスペンス。最後まで観ることで、タイトルの意味合いが理解できる仕掛けだ。いろんな意味で、アミューズ映画だが、清原果耶のスゴさはもちろん、『ひとよ』の田中裕子に続き、ベテラン女優と組むと、『るろ剣』と違った化学反応を起こす佐藤健がいい。原作からの脚色により、真犯人の件はかなりムリが生じたが、被害者と加害者の関係性から端役に至る徹底したキャスティング(ただ、佐藤浩市はいない!)など、いかにも瀬々敬久監督作らしい力技を感じる仕上がりで、★おまけ。
罪と罰
佐藤健×阿部寛のヒューマンサスペンス。監督はこのジャンルに圧倒的な信頼度のある瀬々敬久監督。
という盤石の体制にまず、見る前から安心させられる。
そんな中でヒロインを演じた清原果耶の存在感が抜群でした。今年はブレイク年ですね。
そしてターゲットになる役を引き受けた永山瑛太、緒形直人、吉岡秀隆の3人。
物語の中でとても重要な二面性を持つ難しいキャラクターをこういう実績のある俳優が引き受けてくれたことは大きなことと言えるでしょう。
結果として非常に物語に膨らみのある映画になりました。