おかえり ただいま (2020):映画短評
おかえり ただいま (2020)名古屋闇サイト殺人事件の深層に迫る力作
2007年の「名古屋闇サイト殺人事件」を題材にした作品。前半は幼少期から事件に巻き込まれるまでの被害者と母親の日常を描いた再現ドラマ、後半は事件後の母親を取材したドキュメンタリーで構成されている。あまりにも理不尽で痛ましい事件ゆえ、最後まで見ることが出来るだろうかと躊躇したが、しかし事件そのものの描写には残酷過ぎない配慮がなされている。もちろん、それでも被害者の無念を思うと胸が痛むことに変わりはない。さらに、本編では加害者側の生い立ちや素顔にも迫ることで、いつ誰が犯罪に巻き込まれるか分からないことと同時に、ごく平凡な人間でも加害者となり得る危うさを浮き彫りにする。決して他人事ではないのだと。
この短評にはネタバレを含んでいます