空に住む (2020):映画短評
空に住む (2020)ライター3人の平均評価: 3.7
多部未華子の繊細な表現力を堪能
両親を失った喪失感を消化しきれぬまま、叔父夫婦が所有する都内の高級タワーマンションへ引っ越した女性が、そこで有名なイケメン・スターと知り合い恋に落ちる。日常に不満や孤独や悩みを抱えながらも平静を装わねばならない現代女性の生きづらさを描いた作品だが、どうも全体的な流れの中で「スターとの恋」が浮いてしまっている印象は否めない。ヒロインと秘密を抱えた会社の後輩、叔父と年の離れた若い妻、この3人の女性にもっとフォーカスして掘り下げた方がより伝わるものがあったようにも思う。とはいえ、自らの感情との折り合いがつかないヒロインの困惑を繊細に表現する多部未華子など女優陣はいずれも好演。
心に沁みる、不思議な感触
何とも、不思議な映画です。
もちろん、映画なので、物語の中には様々なドラマティックな展開も描かれているのですが、それらをもってしてなお、不思議な程に穏やかな気持ちになります。
多部未華子を中心に、抜群に巧くて豪華なキャストが並んでいるのですが、それが映画の世界にびっくりするほど馴染んでいます。
なにかすごいことがあるわけでもないのにとても心に沁みて、見終わった後からもまたもう一度見たくなるとっても不思議な映画です。
やはり多部ちゃん、最強説
経理部の森若さん、極端でも等身大の「わたナギ」メイと、水を得た魚のごとく絶好調の多部未華子だが、今作では「感情と言動が一致しない」微妙な表現が要求される。しかも高級タワーマンションの新生活、『ノッティングヒルの恋人』的セレブとの恋愛、ワインだらけの日々と一見、地に足のつかない状況(物語的には自然な流れ)も何のその、主人公にシンパシーを感じさせるのは、彼女の実力と今の勢いのなせる業か。そこに過去最強のハマリ役で岩田剛典が加勢。
意外な部分では日常に虚しさを抱えつつ、それを受け止めようとする、主人公のおばの心情がグサリ突き刺さる瞬間も。主題歌は世界になじむが、ところどころ挿入される音楽に違和感。