ノッティングヒルの洋菓子店 (2020):映画短評
ノッティングヒルの洋菓子店 (2020)ライター2人の平均評価: 3
ブレクジットにもスウィートに喝を入れる癒しのドラマ
揺れ動くブレクジット次第でどうなるはわからないけれど、訪れるたびに人種の坩堝感を実感するロンドン。そんな多様性を重視する街の菓子店を舞台に愛する人間を失った人々のそれぞれの癒しを追う優しい物語だ。コミカルな演技で魅力を発揮するS・イムリーが喪失感に苛まれながらも前進する祖母を快演し、物語を牽引する。彼女とご近所さんとの淡い恋も素敵だ。舞台となる菓子店が提供し始めるインドや中国、トルコなどさまざまな国の菓子が本当に美味しそう。移民排斥にスウィートに喝を入れる店の経営方針、万歳だ。製作に協力したヨタム・オトレンギのデリは次のロンドン旅行で“訪ねたい店”リスト入り!
華やかすぎないのが英国スイーツの魅力
"ノッティングヒル"と"洋菓子"という、スイートなイメージの言葉が2つ重なったタイトルどおりの甘さと柔らかさ。とはいえ、英国のスイーツ店なので、洋菓子のルックスは愛らしくはあるが華やかすぎず、少し無骨な雰囲気なのがむしろ魅力。近所の住民たちそれぞれの故郷のお菓子も、見た目はけして派手ではない。華やかさではないところに魅力があるのは、映画のストーリーも同じ。ある女性が事故で急死してしまい、残された彼女の親友、娘、疎遠だった母親という、それぞれ世代の異なる3人の女性が、悲しみと喪失感を抱えながら、生き延びていく方法を見つけていく。甘いだけではない物語なのだ。お菓子同様、じっくり味わいたい。