感謝離 ずっと一緒に (2020):映画短評
感謝離 ずっと一緒に (2020)平凡な老夫婦の最後の日々を静かに見つめた佳作
誰にでもいつかは必ず訪れる、愛する人との永遠の別れをテーマに、長年連れ添った平凡な老夫婦の最後の日々を丹念に綴っていく。あえてドラマチックな展開やこれみよがしなお涙頂戴を排除し、人間の老いと死をごく自然な日常の一コマとして捉えた小沼雄一監督の素朴な演出が好感度大。だからこそ、残された者の胸に去来する夫婦の歴史と記憶がじわじわと観客の胸を揺さぶる。その夫婦役を演じるのが尾藤イサオと中尾ミエ。どちらも日本の歌謡ポップスの先駆者と呼ぶべきレジェンドで、意外にも今回が映画初共演とのことだが、同じ時代の芸能界を生き抜いてきた仲間同士だからこその絆のようなものが芝居にも感じられて説得力がある。
この短評にはネタバレを含んでいます