愛しの母国 (2019):映画短評
愛しの母国 (2019)ライター3人の平均評価: 3.7
優れた国策プロパガンダ映画のお手本
懐かしき往年のソビエト映画をも彷彿とさせる、紛うことなき中国共産党の国策映画。中華人民共和国の建国70年を記念し、建国宣言式典から香港返還、北京五輪に神舟10号の帰還など、中国人民の記憶に残る7つの歴史的イベントにまつわるエピソードを7人の監督が描く。あえて政治的にセンシティブな話題を避け、その瞬間に立ち会った名もなき庶民の物語に徹しているところは巧いし、なにより見る者の感情に訴えかけるストーリーテリングはどれも見事。そういう意味で、非常に優れたプロパガンダ映画。それゆえ難色を示す向きもあるだろうが、しかしテーマやメッセージがそこにある限り、全ての映画は多かれ少なかれプロパガンダである。
国家礼賛作で中国人のメンタリティを知る
チャン・イーモウ監督が渾身のパワーを注入した、建国70周年を寿ぐ国家礼賛作品! 国旗掲揚に関係する2つのエピソードに国旗にかけるチャイナ・プライド(?)を感じるが、面子が何よりも大事なメンタリティに失笑。中国版チェルノブイリを体を張って防いだ青年、神船10号の帰還に遭遇し真人間となる兄弟などなど、名も無き国民の奮闘が国を作ったという構成に政府の指導が透けて見える。日本人の知らなかった逸話もあり、「それ、美談ですか?」と不思議に思うことも少なくない。この作品で愛国感情を昂らせているという中国人の考え方や政治思想を知る上では参考になるかもしれない。
新旧7人の監督が得意ジャンルで激突!
名もなき小市民を主人公に、70年の中国史における歴史的瞬間を切り取った、怒涛のオムニバス7本立。単なるプロパガンダ映画と侮るなかれ! 豪華キャスト演じる職人や科学者、パイロットらから見た仰天エピソードを独自のタッチで描くのは、巨匠チェン・カイコーから『海洋天堂』のシュエ・シャオルー、『薬の神じゃない!』のウェン・ムーイエといった世代を超えた監督。ジャンル的にも人情コメディからラブストーリー、アクション、ロードムービーなど、七人七色。お気に入りの一本を見つけられると同時に、フェイ・ウォンの主題歌に合わせ、スクリーンを五星紅旗が埋め尽くすエンディングなど、いろんな意味で圧倒されること間違いなし!