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ブレスレス (2019):映画短評

ブレスレス (2019)

2020年12月11日公開 105分

ブレスレス
(C) Helsinki-filmi Oy 2019

ライター3人の平均評価: ★★★★★ ★★★★★ 3.7

なかざわひでゆき

SM行為を通じて互いに救いを見出す男女のラブストーリー

なかざわひでゆき 評価: ★★★★★ ★★★★★

 亡き妻を救えなかったことの無念を抱えて生きる男が、たまたま迷い込んだSMクラブで女王様と出会い、肉体の痛みで心の痛みが緩和されることに気付くのだが、それゆえマゾヒズムの欲求もどんどんと加速し、やがて生活に支障をきたすほど溺れる。その女王様役の女性もまた、孤独ゆえの加害欲を抱えているのがミソ。ある意味で運命の出会い。これは、そんな2人がエスカレートするSM行為を通じて互いに救いを見出すという、これまであまりなかった視点の奇妙なラブストーリーだ。フェティッシュでスタイリッシュな映像と、あえて多くを語らぬ知的な語り口が魅力。『トム・オブ・ホランド』のベッカ・ストラングがここでも大胆な芝居を見せる。

この短評にはネタバレを含んでいます
くれい響

すべてが救われるラストカット

くれい響 評価: ★★★★★ ★★★★★

英語題“イヌはズボンを履かない”が示すように、女王様のイヌになってしまった男の剥き出しの人間ドラマ。外科医の主人公には悲しい過去があるだけに切ない一方、限界突破による首コルセット姿が『Mr.BOO!!』ばりに滑稽に見えるなど、悲喜劇としてのバランスは、同郷カウリスマキ監督の匂いも感じられる。そこに、まさかそんなところで爪剥がしなど、目を背けたくなるホラー演出も加わり、珍妙な味わいに。不気味かつ官能的な映像も見どころだが、愛娘とのエピソードなど、脚本の詰めの甘さもあり、観方によっては“バイトSM嬢の受難”に見えるかも。ただ、夢に出そうなインパクトのラストカットで、すべてが救われる。

この短評にはネタバレを含んでいます
相馬 学

ヘンタイを超えて、性の多様性の肯定へ

相馬 学 評価: ★★★★★ ★★★★★

 本格的なSM性愛を描いており、ヘンタイと決めつける向きもあろうが、性の多様性が尊重される現代では、それは無粋というものだ。

 主人公は亡き妻の面影を追い、SM嬢であるヒロインに窒息死スレスレの性愛を要求する。この時点では客とホストの関係でしかないが、それが変化していくさまを、本作は丁寧に見つめる。ビジネス上のSM関係にから、死の欲求とそれへの拒絶、そして新たな関係へ。過程がしっかり見えるから、単にヘンタイと切って捨るのがはばかられる。

 暗闇と灯りのコントラストが活きた映像美に加え、ホラーのようなスリルを醸し出すバイオレンスも活きた。目が離せない、壮絶なラブストーリーだ。

この短評にはネタバレを含んでいます
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