総理の夫 (2021):映画短評
総理の夫 (2021)ライター3人の平均評価: 3.3
ある意味で日本の現実を突きつける政界コメディ
日本初の女性総理大臣誕生がなんとなく現実味を帯びてきた今、むしろ本作のような清廉潔白で高潔な女性総理大臣が実際に日本で誕生するのはだいぶ先のことだろう、と思わせられるという意味において現実を突きつけられる作品。裕福で恵まれたノンポリ男性が、「総理の夫」という立場を通してジェンダーギャップの壁を知る。といっても、基本的には理想主義的な夢物語に終始しており、中でも主人公のあまりに無邪気でピュアでイノセントなキャラはマンガ的に過ぎるだろう。劇中に掲げられる女性総理の政策にも疑問符。あれで有権者の支持を得られるとは思えない。政界ドラマとしては現実味に乏しい。
田中圭の受け芝居を堪能
総裁選が行われるタイミングで、劇場公開されるのが、なかなか興味深い女性総理をテーマにしたヒューマンコメディ。とはいえ、タイトルが示すように、主人公は“夫”であり、鳥類を研究する以外に、何の取り柄もなかったボンボンが、妻の就任から妊娠を機に、初めて世間と向き合う成長物語。「おっさんずラブ」同様、周りに振り回され、慌てふためく田中圭の受け芝居を楽しむ一本といえるだろう。テロップや音楽などで余計なことまで説明してしまうあたり、TVドラマ感も濃かったりするが、よく言えば、いかにも河合勇人監督作らしい予想を裏切らない手堅い作り。総理を演じる中谷美紀の芝居も、妙に説得力アリ。
希望だけで終わらないことを
「中谷美紀が総理大臣です」と劇中に登場すると、見事な存在感と説得力があって、意外なほどにすんなりと受け入れられている自分がいました。
物語の展開とメインの二人を囲むキャラクターがちょっとベタな感じではありますが、芸達者が揃っているのでちゃんと見れます。
田中圭の受け身の芝居は面白く、中谷美紀ともメリハリがあって楽しいです。
女性の国家元首というのものは世界的に見れば決して珍しい存在ではなくなってきていますので、この話もフィクションのままで終わらないことを祈ります。