サン・ラーのスペース・イズ・ザ・プレイス (1974):映画短評
サン・ラーのスペース・イズ・ザ・プレイス (1974)ライター2人の平均評価: 3.5
極彩色のエジプト神話風SF世界に目が眩む
極彩色で呪術的で祝祭的。サン・ラーは、もっとも直接的に思想を伝える方法として"音楽"を用いたので、ミュージシャンに分類されやすいのだろうが、この映画を見れば、彼がある思想の実践者であったことがわかる。そもそも彼の極彩色のエジプト神話風装束を見れば一目瞭然、実はビジュアルで表現する力に優れた創作者でもあった。彼が地球上にいた時代にiPhoneとYouTubeがあれば、ミュージシャンではなく映像作家になったのではないか。この映画に登場する宇宙船、別次元への扉などの各種アイテムの造形は、まさにマジカル。深遠な思想を語りながら、それが重くも深刻にもならず、どこまでも明るく輝かしく、解き放たれている。
“宇宙人”が人間に説く、ユルくもリアルな哲学
サン・ラーは前衛的な作風に加え、ぶっ飛んだ思想で知られるジャズアーティストだが、本作ではそんな彼の思想がブラックスプロイテーション映画の枠組の中で語られる。
“星も惑星も何もかも正しい場所にある。ズレているのは地球だけ”という歌に象徴された文明批判が人種差別への風刺に直結。宇宙的な視野を持つサン・ラーのユニークな哲学には訴えかけるものが確実に宿る。
とはいえ真面目にそれを語るわけではなく、映画はSFやユーモア、エロスに彩られ、1970年代カリフォルニアののどかさも手伝い、ノンビリとした印象をあたえる。“宇宙人”サン・ラーのピースな世界を、当時のユルい空気ごと楽しんでしまうが吉。