ザ・ビートルズ:Get Back (2021):映画短評
ザ・ビートルズ:Get Back (2021)ライター2人の平均評価: 5
ほぼタイムマシンの発明に近い!
計7時間50分。もしこれが劇場用だったら、ワン・ビンや(最近の)ワイズマン級の体感的長尺ドキュメンタリーだ。1969年1月に撮影されたいわく付きの映画『レット・イット・ビー』が、こんな美しい記録になるとは……もう「夢以上」。81分の編集により歪められた歴史だけでなく、状態の悪いフィルム素材がコンピュータアルゴリズムで超・鮮明になった。本作が成し遂げた「修正」には多重の意義がある。
日本では『サマー・オブ・ソウル』や『アメイジング・グレイス』が劇場公開された年に、この重要作が配信ですぐ観られる手軽さに戸惑いつつも、良い時代になったと呟きたくなる。それにしてもビリー・プレストンのかっこいいこと!
後戻りできなかった、ビートルズという名の“旅の仲間”
映画『レット・イット・ビー』がリンゼイ=ホッグ監督の言葉どおり“素材はあるが物語がない”ものなら、本作はP・ジャクソンが同じ素材を使い、ビートルズの物語を探求した意欲作。
計470分の三部作だからメンバー4人の人柄や、ぎくしゃくした関係も見えてくる。もはや『~ヤァ!ヤァ!ヤァ!』の頃の無邪気さはない。“楽しみではなく仕事になってしまった”というジョンの言葉はバンドの終着点を示しているよう。
セッションを含めて楽しげな瞬間は何度もあるが、個々の考えの違いも浮き彫りになり、末期の哀愁が際立つ。フロドがホビット庄に戻れなかったように、彼らもビートルズにはゲットバックできなかったのだ。