明け方の若者たち (2021):映画短評
明け方の若者たち (2021)ライター3人の平均評価: 4
「エイリアンズ」で目覚める彼女の秘密
RADWIMPSにキリンジ、フジロックといった音楽ネタに、京王線沿線と、どうしても『花束みたいな恋をした』と比べがちな5年間のラブストーリー。そこに彼女の“秘密”というギミックがあり、それにより北村匠海演じる主人公の虚しさが倍増。『ボクたちはみんな大人になれなかった』感が醸し出される。今や安定・安心の北村だが、新卒社員を演じると、ときにJTのCMに見えたりするわけで、今回は同期役の井上祐貴がサポート。とはいえ、原作のユルさなのか、いろいろとモヤモヤした部分も残り、前出の2本に遠く及ばず。いつの間にラブストーリーの旗手みたいになった松本花奈監督だが、また奇妙な作品を撮ってほしいところだ。
朝まで飲んで語り明かした「あの頃」を思い出させてくれる
大学卒業を目の前にした飲み会で彼女と知り合い、前途洋々たる未来への期待に胸を膨らませる若者が、しかし社会へ出てみると「こんなはずじゃなかった」という現実に次々とぶち当たり、やがて楽しかった青春時代も終わりを迎えていく。いやあ、これは「かつての若者」世代なら刺さりまくる映画でしょう。友達や恋人と夜遅くまでダラダラと飲み明かし、仕事の愚痴や将来の夢などを取りとめもなく語りながら、まだ誰もいない明け方の東京の街をトボトボと歩きながら家に帰る。ああ、自分もこんな20代を過ごしたっけなあ…と久しく忘れていた「あの頃」を思い出させてくれる作品。ほろ苦さと甘酸っぱさの絶妙なブレンドがたまらない。
Bitter & Sweet
原作小説を読んでいたのであらすじはわかっていましたが、映像になるとまたひと味違う風味になりますね。
北村匠海の主人公はイメージ通りの部分がありますが、ヒロインの黒島結菜はちょっと意外な感じがしました。しかし、良い意味で裏切ってくれて、素敵なサプライズといった感じで、いい発見でした。
演出面でいえば、あれをちゃんと見せないのはよく通せたなと思います。小説の文字情報だけなら成り立つ設定だと思いましたが、映像でもちゃんと成り立たせたのはお見事でした。
勢いで恋愛できるギリギリの世代=青春の生々しさを感じられました。