前科者 (2021):映画短評
前科者 (2021)ライター3人の平均評価: 4.3
他者の痛みや苦しみに寄り添うことの大切さ
コンビニのアルバイトで生計を立てながら、保護司として献身的に元受刑者たちの世話をするヒロイン。そんな彼女が最も更生に期待を寄せていた男性が、こともあろうか連続殺人事件の容疑者として警察から追われる。果たして、彼は本当に再び罪を犯したのか?その真相究明と並行しながら、ヒロインが保護司を志すきっかけになった過去の出来事を紐解いていく。有り体な表現だが、まさに「罪を憎んで人を憎まず」。確かに理不尽で身勝手な犯罪も多いが、しかし誰かが耳を傾けて手を差し伸べれば未然に防げただろう犯罪も少なくない。昨今の殺伐とした世の中にあって、他者の痛みや苦しみに寄り添うことの大切さを痛感させてくれる力作だ。
有村架純×森田剛が起こす化学反応
無報酬ながら、元受刑者の更生のために日々奮闘する保護司・阿川。『花束みたいな恋をした』で、映画俳優としての深みを出してきた有村架純の新たな挑戦作だが、ちょっと不器用なメガネっ子は、ハマり役といえる。まっすぐゆえに、どこか危機感のなさも妙にリアリティを感じさせるところだ。そこに、仮釈放中の元殺人犯を演じる森田剛や謎な若葉竜也らが絡んでくるのだが、それによる化学反応も見どころ。さらに、『ヒメアノ~ル』の後日談として観ると、かなり感慨深いものに。阿川との関係性が続く石橋静河演じるみどりなど、ドラマ版「新米保護司・阿川佳代」から繋がる展開は嬉しいが、ドラマ版に比べ、かなり重厚な仕上がりだ。
慈愛と枯れ
有村架純が持つ”慈愛の人””受容の人”というキャラクターを最大限に活かしたヒューマンサスペンス。
独特の包容力、母性のようなものが強く映画に焼き付けられています。
対する森田剛はこれまでにない、受け身かつ枯れの演技を披露。こういう森田剛は初めて見ました。
このメインの二人の俳優が持つ特有の個性が相乗効果を生んで骨太なドラマになっています。
脇でいえば何と言ってもマキタスポーツの酸いも甘いも嚙み分けたベテラン刑事がいい味を出しています。
WOWOWのドラマは見ていなくても十分楽しめる映画です。