光を追いかけて (2021):映画短評
光を追いかけて (2021)ライター2人の平均評価: 3.5
失われゆく日本の田舎への想いをファンタジックに描く佳作
少子高齢化と過疎化で寂れ行く秋田県の田舎町。もうすぐ廃校になる高校へ転入した孤独な少年は、周囲に心を閉ざした美しい少女に惹かれ、やがて緑色に光る謎の物体が田んぼの上空に飛来する。失われつつある故郷に複雑な思いを抱く少年少女たち、そんな彼らにどんな未来を残してやれるのかと模索する大人たち。そんな、日本全国の田舎に暮らす人々が等しく抱いているであろう心の揺れ動きを、美しい田園風景とほのかにファンタジックなムードで包み込んだ、なんとも不思議な味わいのある作品。若手俳優のキャスティングがとても良く、高校生たちのリアルで等身大な青春群像劇としても魅力的だ。
緑の光線、またはきりたんぽ
秋田のご当地映画ながら、20年前に突如として現れた“緑の光”と“ミステリーサークル”の事件をモチーフにしているという、かなり大胆な一作。美しい田園風景や思春期の少年少女の危うさを捉え、『リリイ・シュシュのすべて』のようなカットも多い。一方で、都会から転校してきた主人公や彼と秘密を持つミステリアスな少女の交流や、同級生を巻き込み奇跡を起こすクライマックスなど、行定勲監督の『遠くの空に消えた』との共通項が多さも興味深いところ。気が強い優等生を演じる中島セナの存在感が圧倒的ななか、不登校のヒロインを演じる長澤樹も応戦。屋根の上で、彼女が民謡「秋田草刈唄」を歌うシーンも印象的だ。