ショック・ドゥ・フューチャー (2019):映画短評
ショック・ドゥ・フューチャー (2019)ライター2人の平均評価: 4.5
「彼女(たち)」によるフューチャー・ミュージックの創造過程
大型シンセサイザーが設置されたアパートメントの一室で、セローンの名曲「スーパーネイチャー」に合わせてアルマ・ホドロフスキーが踊る――この冒頭だけで心掴まれた。1978年のパリ、未知なる“楽器なしのディスコ”を具現化しようとする彼女。男性優位に抗するシスターフッドを交えつつ、電子音楽の黎明期という新しい時代の到来が象徴的に重ね合わされる。
音楽ユニット「ヌーヴェル・ヴァーグ」のマーク・コリンが監督デビュー。部屋の壁にはゴダール『パート2』のポスター。そしてレコマニア男の登場シーンの面白さ(ヒロインがスーサイドを酷評するのが可笑しい)。彼いわく「レコードの真の聖地は東京だ。あそこはヤバい!」
新しい音楽を見つけた時の喜びと感動が甦る
クラフトワークやジョルジオ・モロダーの成功でエレクトロ・ミュージックが若者に注目されつつ、大人世代からはまだまだキワモノと見做されていた1978年のパリ。旧世代のオジサンたちが牛耳るフランス音楽業界でくすぶる若い女性作曲家が、たまたま出会った日本製の画期的なリズムマシンに強い感銘を受け、友人たちを巻き込んで近未来の音楽を創り出していく。たった1日の出来事の中に時代の転換期を映し出し、自らの道を切り拓くため古い体質の男社会に抗うヒロインの苦悩と葛藤と希望が描かれる。監督のエレクトロ・ミュージックに対する愛情がいっぱい。新しい音楽を見つけた時の喜びと感動を知る全ての人におススメだ。