DAU.退行 (2020):映画短評
DAU.退行 (2020)『地獄篇』はいまもすぐそばにある
あのKGB調査官アジッポが再びやってくる! まさかのスマッシュヒットとなった『DAU.ナターシャ』に続き、今回は「雪どけ」を経て、プラハの春への軍事介入に向かう1966年~68年のソ連が時代背景。ダンテの『神曲』になぞらえた全9章、6時間9分というドラマのミニシリーズばりの構成&長尺で贈る大群像劇は、前作を序章とする本格展開といった趣だ。
本作の主題を端的に言うなら「スターリン主義への退行」だろう。差別や性的搾取、優生学、疑似科学や陰謀論など、現在も常に点滅を繰り返している諸問題が渦巻いてくる。“終わったはずの危険思想”へと安易に「退行」してしまうことは、我々が普遍的に抱える罠でもあるのだ。
この短評にはネタバレを含んでいます