世の中にたえて桜のなかりせば (2021):映画短評
世の中にたえて桜のなかりせば (2021)ライター2人の平均評価: 3
岩本蓮加のアイドル映画としても成立
どこかに旅立つために遺書を書く男や妙に川にこだわる男など、依頼者が決して老人だけではない異色の終活映画。「なぜ、こんなバイトに店舗を任せる?」という疑問を感じさせるのは前半だけで、ある種のファンタジーと捉えれば、あまり気にならなくなるほど、まっすぐな作り。乃木坂46・岩本蓮加の眩しいほどの透明感や凛とした魅力もしっかり捉えており、彼女のアイドル映画としてもしっかり成立している。決して派手さはないが、日本人の心に根付いている桜と重ねた合わせた死生観もしっかり描くなど、エグゼクティブ・プロデューサーも兼ねた昭和の名優・宝田明の遺作として申し分ない仕上がりといえるだろう。
桜の下のぬくもり
思いのほかと言っては失礼ですが、とても良い映画でした。乃木坂46の岩本蓮加と宝田明という70歳差の主役コンビの相性は非常によかったです。
岩本蓮加は映画はもちろん、演技自体の経験値もまだ少なく、硬さを感じる部分もありましたが、それがティーンエイジャーのリアルに結びついていたと思います。
それを流石の懐の深さで受け止めるのが本作が遺作となった宝田明。企画立案から関わったこの大ベテランは、満州に出自を持つなど自分自身を重ねる役どころ。しかし、この部分はあくまでもスパイスで、劇中では軽やかでチャーミングな老紳士を好演していました。80分という語り過ぎない上映時間にも好感が持てます。