よだかの片想い (2021):映画短評
よだかの片想い (2021)ライター2人の平均評価: 4
松井玲奈がヒロインの心の機微を見事に表現
恋愛することで、これまで避けてきたコンプレックスと向き合い、自意識から解放されていくヒロイン・アイコ。宮沢賢治の「よだかの星」をモチーフに、ルッキズム問題に鋭く切り込んだ原作だが、恋愛慣れしてないアイコの心の機微を見事に表現する松井玲奈に対し、飄々とした雰囲気が魅力ながら、それがアイコを戸惑わせる要因にもなる映画監督を中島歩が演じるキャスティングが肝となる(今回はお笑い要素なし!)。前作『Dressing Up』に続き、ハッとさせられるホラー演出も飛び出す安川有果監督のタダモノではない感に加え、アイコの家族よりも彼女と仲間の関係性を際立たせた脚本家・城定秀夫の仕事にも注目。
全てのショットに戦闘的主体の思考が宿っている
クールな印象の松井玲奈扮するアイコの恋愛エンジンが掛かると、増村保造映画の若尾文子の如き狂熱を帯びていく。単刀直入な怒涛の100分。映画監督・飛坂役の中島歩(『偶然と想像』『愛なのに』と本作はまるで三部作!)が「これまで許されてきた男性性」を新たな評価の壇上に乗せる。凄い密度と推進力だ。クラシックな恋愛映画の濃厚な味が、現代の尖端にぶっ刺さる問題提起の連打で引っ繰り返されていく。
鏡面反射的な思考が絶え間なくうねり、宮沢賢治の『よだかの星』にも絡めたルッキズム、非・当事者問題などに連動して城崎やミュウ先輩が重要人物に浮上。監督・安川有果×脚本・城定秀夫の異色タッグは途轍もない成果を生んだ!