東洋の魔女 (2021):映画短評
東洋の魔女 (2021)ライター2人の平均評価: 3.5
日本が貧しくとも希望に溢れていた時代の記憶が甦る
1962年の世界選手権で強豪・ソ連を破って初優勝を果たし、その2年後の東京オリンピックでも金メダルを獲得して日本中を沸かせた「東洋の魔女」こと日本女子バレー・チーム。これは当時の貴重な記録映像と、80代になった現在の彼女たちのインタビューを織り交ぜながら、その軌跡を追ったフランス産のドキュメンタリーである。浮かびがるのは、今まさに高度経済成長期へ入らんとする時代の、貧しくとも将来への希望に満ち溢れていた日本のエネルギーとパワー。彼女たちはその象徴だったのだろう。「金メダルを取れなかったら日本に居られなくなる」ほどのプレッシャーに打ち勝った精神力には脱帽である。
五輪の映像に「苦しくったって〜」の歌詞が重なるシュールな体験
1964年、東京オリンピック金メダルの女子バレーチームの軌跡に貴重な映像が詰め込まれ、昼間は会社勤務で、夕食が午前2時(!)になる過酷な練習風景や、当時の選手たちの素顔の行動が、とにかく新鮮。映像も想像以上にキレイ。現在では明らかにパワハラと批判されそうな特訓を見るにつけ、こうした“スポ根”は過去のものになったノスタルジーも。
最大のポイントは、試合途中の現存していない部分を、「アタックNo.1」のアニメで補完してつなぎ、テンションを限りなくアップさせること。かなり自由な編集に、フランス人監督の愛を感じてしまう。
すでにこの世を去った人も含め、現在の魔女たちが思い出を語り合う場面も微笑ましい。