ホテルアイリス (2021):映画短評
ホテルアイリス (2021)『愛人/ラマン』を思い起こさせる官能世界
老人と少女による物語だった小川洋子の原作を脚色。近年はヒロインの父親役も増えた永瀬正敏演じる翻訳家と陸夏演じる若い娘の関係性は、どこか『愛人/ラマン』を思い起こさせるものとなり、アジアとヨーロッパの雰囲気を醸し出す台湾・金門島でのロケーションがとにかくハマる。デレク・ツァン監督作で異彩を放つ撮影マン、ユー・ジンピンによる息を呑むミステリアスかつ官能的な映像美に誘われつつ、映画のオリジナル要素となる「鏡の中の鏡」など、いろいろと解釈ができる面白さもアリ。また、淡々とした展開やリー・カンションが放つ存在感など、台湾ニューウェーブを経た台湾映画ファンならマストといえるだろう。
この短評にはネタバレを含んでいます