アンラッキー・セックスまたはイカれたポルノ 監督〈自己検閲〉版 (2021):映画短評
アンラッキー・セックスまたはイカれたポルノ 監督〈自己検閲〉版 (2021)![アンラッキー・セックスまたはイカれたポルノ 監督〈自己検閲〉版](https://img.cinematoday.jp/a/T0027157/_size_640x/_v_1647579518/main.jpg)
ライター2人の平均評価: 4
現代社会の腐敗と偽善を過激にぶった切る
これまたなんとも挑発的な映画だ。夫とのプライベートなセックスビデオがネット流出してしまい、これを問題視する保護者たちから吊るし上げを食らう女性教師。その対応に奔走する彼女の姿を追いつつ、ルーマニア社会を覆う閉塞感が炙り出される。豪華な巨大モールと寂れた廃墟が象徴する大都会ブカレストの極端な貧富の格差。多くの人々が不満や怒りを抱え、隙あらば誰かに八つ当たりをしている。人種差別や階級差別が蔓延し、政治も社会も腐敗だらけ。もちろん、これは決してルーマニアだけの問題ではない。そのうえで本作は問いかける。モラルの崩壊した現代社会で、本当に破廉恥なのはいったい誰なのか?と。
ザッパ的、マカヴェイエフ的
2018年度の『タッチ・ミー・ノット』に続きベルリン映画祭金熊賞に輝いたルーマニア映画。日本公開版は皮肉が上塗りされて別の味が出ることに。フランク・ザッパの引用/援用ありだが、社会諷刺、ブラックユーモア、怒濤のコラージュ/モンタージュにおいて確かにザッパ的。だがもっと露骨な影響元は東欧組のドゥシャン・マカヴェイエフだろう。
政治と性の前衛(=冗談)。『WR:オルガニズムの神秘』(71年)や『コカコーラ・キッド』(85年)等のDNAが77年生のラドゥ・ジューデ監督に宿る。偉大な先輩ふたり亡き今、もし彼らが生きていたら、混沌のコロナ禍の現在をどう描いたかとのイメージで楽しんだ。特に第2章最高。