愛すべき夫妻の秘密 (2021):映画短評
愛すべき夫妻の秘密 (2021)ライター2人の平均評価: 3.5
「顔が似ていない」という批判もさすがの役作りで克服
ソーキンは監督として回を重ねるうちにリラックスしてきている感じ。伝説のコメディエンヌの話であることや、効果的に入る実在の人々の面白いコメントのおかげもあり、彼の作品としては珍しくユーモアがある。1週間に絞りつつ、フラッシュバックを使いながら、ルシル・ボールのその時点までの人生を語っていくのも良い手法だ。顔が似ていないことで当初は批判もされたニコール・キッドマンだが、さすがの役作りで、そんなことも忘れさせてしまう。偶然にも同じタイミングで製作進行していたエイミー・ポーラー監督によるドキュメンタリー「Luci and Desi」と合わせて見ると、より興味深い。両作品とも夫妻の子供たちのお墨付き。
国民的ドラマを作り続ける、1950年代のTV舞台裏に興味津々
国民的ドラマ「アイ・ラブ・ルーシー」を作り続ける苦心がしっかり刻印。脚本の読み合わせから本番までの特急進行、スタジオ観覧者の反応など、舞台裏を深く楽しめる作り。現実の夫婦がドラマで夫婦役を演じる悩ましさが伝わる。当時の関係者の証言を俳優にドキュメンタリーっぽく演じさせて挟み込んだり、重層的演出を名手A・ソーキンがうまく整理しながら進行。
斬新なアイデアを出してルシル・ボールが悦に入る表情など、二コール・キッドマンは“微妙にそっくりに見せる”高等テクニックを成功。夫役のJ・バルデム、共演者役のJ・K・シモンズは、彼らのキャリアを考えると今回の演技でオスカーノミネートされるほどだったか大いに疑問。