恋は光 (2021):映画短評
恋は光 (2021)ライター3人の平均評価: 4.3
“キラキラ映画”の極み
これまでも、“友だち以上、恋人未満”な関係性を描いてきた小林啓一監督だが、今回はちょっとレベルが違う。原作コミックが持つ会話劇の面白さを、自らが得意とする領域に持ってきて、徹底的に恋愛哲学をカマしまくる。しかも、主人公には恋する者のキラキラが見えるというファンタジー要素がありながら、それが物語の邪魔をしない絶妙なバランスに脱帽。これまで過大評価されていた感もある西野七瀬を観るだけでも入場料の価値はあるが、わずかな出演シーンでも怪物感を醸し出す伊東蒼など、ほかのキャストも魅力的。ファーストカットに心つかまれたら最後……。2022年の日本映画を語るには、必要不可欠な一本といえるだろう。
キラキラの「中身」を考察する
「頭でっかちな変わり者」が恋というテーマに沿って現実社会のリアルに揉まれていく。まさに小林啓一イズム溢れる素敵な快作。『ももいろそらを』や『ぼんとリンちゃん』等のヒロイン像を、今回は男子・西条(神尾楓珠)が受け継いだ。時代劇や歌舞伎、近代文学の文豪などの古風さをコミカルに付与しつつ、今までで最も明るい「光」の映画!
主要4人の中で唯一生臭い現実の側に居るのが宿木(馬場ふみか)。She&Himの曲と共に冒頭ショットを飾る彼女を主軸にすると、ピュアな三人の世界の「光」にカルチャーショックを受けて変容する物語とも取れるのだ。そうすると原作マンガとも、過去の小林作品とも異なるものに見えてくる!
光る恋心
トリッキーな設定ではあるものの、とても爽やかな”恋愛”についての物語。
物凄いセリフ量をさばいてみせる平祐奈、小悪魔キャラがはまる馬場ふみか共に見事なキャスティングと言ったところですが、それ以上に神尾楓珠演じる主人公の最大の理解者の西野七瀬が最高です。劇中の”ふぇふぇふぇ”という笑い声に見事にやられました。セリフ劇、ディスカッション劇ともいえる映画ですが、会話のリズム感が良く、各々のキャラクターが立っていることもあって、物語は意外なほどに躍動感があって楽しいです。見ておいて良かったと思える一本でした。