復讐は私にまかせて (2021):映画短評
復讐は私にまかせて (2021)ライター2人の平均評価: 3
ジャンル・クロスオーバーのインドネシア版グラインドハウス映画
‘80年代のインドネシア。少年時代のトラウマが原因で勃起不全となり、そのストレスや羞恥心からケンカに明け暮れる乱暴者アジョが、伝統武術シラットの達人であるタフな美女イトゥンと恋に落ちるものの、己の男性機能に対する劣等感によって運命の歯車が狂っていく。男らしさや女らしさといったジェンダー規範が招く悲劇からの復活と再生を、グラインドハウス感満載の荒々しい演出で描いたバイオレンスムービー。格闘技アクションに純愛ロマンスに怪奇幻想ミステリーと、ジャンルをクロスオーバーしたシュールなタッチはかなりユニークだが、しかしそれゆえ全体を通してまとまりに欠ける印象も否めない。
インドネシア産グラインドハウス
シュールな作風ゆえ、東京国際映画祭でも異彩を放つエドウィン監督作が、まさかの劇場公開。EDの荒くれ者と乙女なシラット使いが壮絶バトルの末、恋に落ちるトンデモ展開から始まり、収監された男は盲目の老人から修行を受け、女は復讐の旅に出る。そして、すべてのカギを握るのは、亡霊にしか見えない“復讐の女神”と、東映&香港アクションをベースに、70年代テイストがちゃんぽん状態。撮影に芦澤明子を起用したのは黒沢清監督作へのオマージュにも取れるが、明らかにグラインドハウスを狙った作りで、映画として破綻ギリギリのラインを突き進む。インドネシア映画の面白さを堪能できる一作だが、後半にかけての息切れ感は否めず。