人質 韓国トップスター誘拐事件 (2021):映画短評
人質 韓国トップスター誘拐事件 (2021)ライター3人の平均評価: 3.3
虚実入り雑じるニュータイプの犯罪サスペンス
韓国を代表する国民的大スター、ファン・ジョンミンが身代金目的で誘拐され、人里離れた監禁場所から決死の脱出を試みる…というお話を、そのファン・ジョンミン自身が演じるという犯罪サスペンス。共演作も多いパク・ソンウンが親友として登場したり、ブサイクと呼ばれて役が付かなかった下積み時代の愚痴を漏らしたりなどのリアルなネタを織り交ぜつつ、犯罪映画の仕事で培った知識や俳優ならではの演技力をフル稼働して犯人グループと対峙していくストーリーはなかなかスリリング。これまでになかったタイプの映画と言えよう。犯人グループのリーダーを演じる舞台俳優キム・ジェボムの不敵な面構えがまた凄く良い。
新鋭監督のセンスを感じるリメイク
中国人俳優・ウー・ルオプーの誘拐事件をモデルに映画化した『誘拐捜査』の韓国リメイク。アクション<<<凶悪犯との心理戦という展開は変わらないが、オリジナルではアンディ・ラウが演じたスター役を、ファン・ジョンミンが本人役を演じるメタ設定が面白い。本作でも『ベテラン』など出演作にまつわる小ネタが登場するが、一緒に拉致される一般人、犯人グループの一人、捜査する熱血刑事が女性キャラへと変更したところにも捻りアリ。本人役で笑いを誘うパク・ソンウンの登場やエンディングにイギー・ポップの「The Passenger」を流すセンスも含め、“公安すごいぜ!”だったオリジナルを上回る仕上がりになっている。
俳優が本人役を演じる異色誘拐サスペンス
俳優ファン・ジョンミンが、ファン・ジョンミンという名の人気俳優の役を演じ、本編中の会話には、実際のファン・ジョンミンの出演作のタイトルや台詞も登場するという、フェイク・ドキュメンタリー的な設定がユニーク。犯人たちとの攻防戦にもこの設定が活かされて、主人公は演技力を使って犯人たちを騙そうと試みるし、犯人たちは彼が俳優だと知っているので、彼の発言や行動を演技ではないかという疑いの目で見る。観客にも、演技かどうかは見分けがつかない。
暴力描写はかなり激しい。犯人グループのメンバーたちは、全員がサイコパスで暴力的な性格だが、みなタイプが違う。主人公が彼らそれぞれにどう立ち向かうのかも見もの。