ロッキーVSドラゴ:ROCKY IV (2021):映画短評
ロッキーVSドラゴ:ROCKY IV (2021)ライター3人の平均評価: 3.3
一見「変わってない」のに微調整が効果大。現代への痛烈な皮肉も
未公開「42分」追加で、全編は3分増量のみ。さぞや大きく入れ替えたと思いきや、基本はほぼ同じであった。時代遅れに見えるシーンをバッサリ削除した以外は、細部の「調整」で人物の心情の伝え方、物語の流れを現代的に観やすくした印象。あるシークエンスをモノクロ変換するなど、監督スタローンの意図がうまく機能した。
メインとなる2つの闘いを軸にしたシンプルな構成が、ストレートな興奮と感動を喚起するのはオリジナルどおり。デジタルリマスターでボクサーの顔にしたたる汗もクリア化。臨場感につながる。
1985年にロッキーが語ったセリフが、2022年の社会情勢へ痛烈な皮肉になるとは、スタローンも予想しなかっただろう。
再編集で、各キャラのドラマが深堀りに!
冒頭から『ロッキー3』延長戦的なアポロの想いがしっかり描かれていることに加え、殺人マシーンにしか見えなかったドラゴの心境の変化など、各キャラのドラマをさらに深堀り。そして、コミカルな家庭用ロボットの登場シーンを全カットしたことで、新タイトル通り「ロッキーVSドラゴ」に至るまでの流れが抜群に良くなっている。オリジナルを観倒したマニアほど高まる細かい編集だが、編集でここまで印象も変わることを実証した異例のディレクターズ・カット。もちろん、シリーズ初見でも楽しめる分かりやすい展開&MTV演出は健在で、『トップガン』とともに80`sを代表するブロックバスター大作の勢いを改めて感じるだろう。
災い転じて
スタローンによって再構成された『ロッキーⅣ』。91分のオリジナルから約40分削った上で42分の未公開映像を加えて94分の映画に仕上げたということで、ほとんど作り直しと言っていいですね。まさかコロナ禍からこんな映画が出て来るとはまさに”災い転じて…”ですね。
本作の見どころは何と言っても人間核弾頭ドルフ・ラングレン。改めて見ると、この人本当に怪物級の偉容を誇り、”シリーズ初の悪役”を熱演しています。
基本的なストーリーラインは変わってないので、当然結末も同じなのですが、それでも、どう見てもロッキーが勝てないと思わせてくれます。彼を発掘してきたスタローンの慧眼は改めて評価されていいのでは。