PIG/ピッグ (2020):映画短評
PIG/ピッグ (2020)ライター2人の平均評価: 4.5
ニコケイのブーちゃん愛に浴する…だけじゃなかった怪味
久々に、あらぬ方向へ導かれる感覚に酔った。
ニコラス・ケイジは、まっとうな物語を怪演でキワモノ別次元へ向かう作品も多いが(それも大好物)、今回は、物語やムードが明らかに異様、なのにニコケイの演技で不思議極まりない感動に至るという、このスターの秘めてた才能に驚嘆。珍作を上質なアート映画に昇華させる…と言ってもいいか。どこかニコケイ、仙人のような境地へ。
愛する豚が盗まれ、必死に取り戻そうとする孤独な主人公の運命は、思わぬシチュエーションが用意されつつ、人生訓めいたセリフも心に響く。上質な文学、というか俳句の“わび・さび”枯淡の味わいも。観る人によって評価は分かれそうだが、ブタの可愛さは格別。
“演技派”ニコラス・ケイジの復帰作
この個性的なインディーズ映画は、ここ10年、B級映画に連続で出演し、アメリカではほぼ忘れられた存在になっていたニコラス・ケイジの復帰作。今作で彼は久々に評価され、オスカー候補入りは逃したものの、放送映画批評家協会賞(CCA )の主演男優部門にノミネートされた。静かで抑えめ、しかし必要な時にはすごい迫力を見せる彼は、やはり超実力派俳優だったのだとあらためて納得。一見シンプルなリベンジ物語に奥の深さと感情、ミステリーをもたせ、独特のトーンを作り上げたマイケル・サルノスキ監督の力量も評価したい。今作で長編映画監督デビューを果たした彼は、「クワイエット・プレイス3」の監督に決まっている。今後、要注目。