MONDAYS/このタイムループ、上司に気づかせないと終わらない (2022):映画短評
MONDAYS/このタイムループ、上司に気づかせないと終わらない (2022)ライター3人の平均評価: 3.7
これは数あるタイムループ物でも出色の仕上がり!
封切り日の重なった同じタイムループものだが、『カラダ探し』とは真逆のお仕事コメディ。毎日が戦場のように多忙な弱小広告代理店のオフィスで、クライアントの無理難題に振り回される社員が、ひとりまたひとりと自分たちが文字通り「同じ1週間」を繰り返していることに気付く。タイムループを自覚したおかげでトラブル続きの仕事がはかどったり、殺伐としていた職場に一体感が生まれたりと、捻りを利かせたブラックなユーモアが実に絶妙。で、どうやら原因は部長の「中年の危機」にあるらしいと分かったところから、思いがけずエモーショナルな結末へと突き進んでいく筋書きも巧い。これは数あるタイムループ物の中でも出色!
フリップ芸ばりなプレゼンに爆笑!
アニメを中心に、もはや擦られまくってるタイムループものだが、そこに“社畜あるある”を掛け合わせたところが新機軸。しかも、ループに気付き始める仲間が増え、ラスボスといえる部長までバトンを繋げていくという展開も興味深い。そして、パワポを使ったフリップ芸ばりなプレゼンに爆笑するなか、『ハケンアニメ』ばりのエモ展開に突入。軽快なテンポを生み出す編集、高まる劇伴やlyrical schoolの楽曲で押し切る力業も悪くないが、それらが妙にあざとく見えてしまうところが評価の分かれどころ。人物描写や伏線回収の巧さなど、ウェルメイドという意味でも『ドロステのはてで僕ら』には及ばずといったところ。
会社あるあるギャグに爆笑苦笑
なんとかタイムループから逃れようとする悪戦苦闘を描くタイムループコメディなのだが、そこに日本の会社組織ならではのあるあるネタを、ギャグとして盛り込んだところが魅力。部署の若手社員がループに気づくが、最終的に部長を説得するため、まず先輩社員を説得し、次にチーム長を、と組織の上下関係の下から上へ、一段階ずつ説得していくことになる。この設定に爆笑かつ苦笑。説得する相手によって方法が違ったりと、会社あるあるで笑わせつつ批評的視線も忘れない。
監督・共同脚本はYouTube短編映画『ハロー!ブランニューワールド』でもタイムループを描いた竹林亮。今回も、同じ時間を繰り返すたびに笑いと感動が増える。