しん次元!クレヨンしんちゃんTHE MOVIE 超能力大決戦 ~とべとべ手巻き寿司~ (2023):映画短評
しん次元!クレヨンしんちゃんTHE MOVIE 超能力大決戦 ~とべとべ手巻き寿司~ (2023)ライター3人の平均評価: 4
『ジョーカー』への『クレしん』からのアンサー
家族なし、恋人なし、友人なし、非正規雇用、さらに推しのアイドルが結婚して絶望した30男、その名も非理谷充(ひりや・みつる)が超能力者になって大暴れ! しんのすけとサイキックバトルを繰り広げる! 社会から取り残され、未来に絶望してモンスターと化した弱者男性とどう対峙するか。本作は『ジョーカー』に対する『クレヨンしんちゃん』からのアンサーに見える。「手巻き寿司」が家族の団らんの象徴として描かれている一方、キーワードが「家族」じゃないのも良かった。詰めの甘さも感じたけど、終盤のたたみかけは泣けたし、サンボマスターの主題歌でまた泣いた。雛形あきこや小宮悦子みたいに、あの人に登場してもらいたかったなぁ。
大根仁カラーがしっかり出た快作!
『SUNNY 強い気持ち・強い愛』以来、5年ぶりとなる大根仁監督の新作映画はまさかの『クレしん』! サラリーマンの聖地・新橋駅前にて、虐げられた青年がヴィランと化す事件発生。奇しくも『イノセンツ』と重なる大友克洋的サイキックバトルから、アクション満載のSFジェットコースタームービーへと加速・拡大していく。
中身は堂々の「笑えて泣ける」。窮屈な世の中にそっと中指を立てつつ、社会派・風刺劇でもある「『クレしん』とは何か」が考え抜かれている。令和日本の若者・子供達への応援歌。しんのすけの夢が「食うのに困らない大人になりたい」というのに思わずグッときた。小西康陽における『おはロック』のような好仕事。
ビターの二乗
もともと”オトナに刺さる”と言われてきた”映画のクレヨンしんちゃん”最新作は初の3DCG作品であることに加えて、大根仁監督が監督&脚本を担当しているということで、”ビター”な要素が二乗されたように感じる一本です。もちろん”クレヨンしんちゃん的”なベタなギャグも満載ですが、展開は実に渋い。それを担っているのがゲスト声優陣の目玉と言える松坂桃李。前々から声仕事の巧さには定評がありましたが、今回も名演を見せてくれました。
スケール感の増しつつ、社会派的なメッセージも含ませるクライマックスは見ごたえたっぷりです。