ウーマン・トーキング 私たちの選択 (2022):映画短評
ウーマン・トーキング 私たちの選択 (2022)ライター3人の平均評価: 4
徹底して独自のスタイルで、やがて信念がストレートに心を刺す
映像ムードや登場人物の会話、衣装から、20世紀初めくらいの時代が舞台なのかと錯覚させ、一種の寓話に見せかけつつ、やがて途中で2010年であることがわかり、それだけこの村が周囲から隔絶しているのだと愕然。悪しき価値観にも囚われる人たちを通し、今もあちこちで変わらぬ性差別を鋭く突き付けるサラ・ポーリーの信念と巧みな設定に終始、心の隅々がざわめき続ける。
ほぼ会話だけで進む構成にやや面食らうも、内容としてはまさに今、観るべき作品。
セリフのある男性キャラを一人だけにして、しかもベン・ウィショーに任せたことで、理解や救い、希望がほのかに漂い、多層的な視点も生み出される。これも監督の秀逸なアプローチ。
サラ・ポーリーの演出がさりげなくしかし強烈
タイトルから性差別の話と思われそうだが、そこに留まらず、あらゆる差別とそれにどう向き合うかについて考えさせられる。
そんな物語を描く監督・脚本のサラ・ポーリーの演出が絶妙。基本的に女性のみ登場し、彼女たちが意見を言い合う会話劇なのに、飽きさせない。語り手がある物語を語る、という枠組みで始まり、すべてが語り手の最後の言葉に集約されるという、全体の構造の美しさ。途中で衝撃的な事実が判明する時の、さりげなさと強烈さ。そして、物語の途中で何度も映し出される、陽差しの中で遊ぶ幼い子供たちの姿も、最後の言葉に結びつく。実力派人気女優たちの、静かでいて熱のこもった競演ぶりからも目が離せない。
問いかけ続けること
非常に取り扱いの難しい題材で、しかも男性の私からこの作品の事を書くとなると立ち位置からしてあれやこれやと考えさせられる一作。それでも放っておけないのは映画として非常に密度が高いドラマだから。監督、製作、出演ととても気の利いた実力派を配していて、オスカー受賞も納得の一本です。正直、容易に答えが出るテーマではないのですが、映画のタイトル通り、語り続ける、問いかけ続けることが何よりも大事だということを教えてくれます。一見すると舞台劇でもいいのではと思うストーリーですが、映画らしい映像の魔法もあって、これは映画であるべきだと感じます。