おまえの罪を自白しろ (2023):映画短評
おまえの罪を自白しろ (2023)ライター3人の平均評価: 2.3
やはり監督には向いてるものと、じゃないのとがある。
ある談合疑惑とそれに関するミステリーなのだが、ここまでのキャストが揃えばある程度誰が犯人だかすぐに気づくというものだ。「正義」というものが何かというのを問う仕様にはなっているが、それもありきたり。けして中島健人や堤真一はじめ役者に不足はないんだけれど、どうにも退屈で盛り上がらない。コメディに関して水田監督はほとんどハズレのない素晴らしい演出家だと思うのだけれども、どうもこうしたサスペンスものに関しては不発に終わることが多く、これもその例外では無いのが残念。
政界スキャンダルの暴露をエンタメに転化
政界スキャンダルを題材にしたドラマながら、100分ちょっとという短さ。原作の政争パートを飲み込みやすく刈り込み、サスペンスのテンポアップを図った工夫は買える。
政争以上に重きを置いたのは謎解きに加え、事件解決に臨む若き主人公の成長。推理力はもちろん、駆け引き上手なところも見せ、何者でもなかった議員二世の政治力の覚醒が見えてきて面白い。
尺を長くして政治家の悪しき部分を赤裸々に描いて欲しかった気もするが、“おまえの罪を告白しろ”と問いたい議員が続出する現実にあって、ある意味、タイムリーな娯楽作ではある。
タイムリミットサスペンスとしては正解
タイムリミットサスペンスでありポリティカルサスペンスでもある一本。前者に重きを置いた結果101分とタイトな上映時間の映画になりました。その分ポリティカルサスペンスだと思うとちょっと描き方に不足を感じる部分もあり、展開に戸惑う箇所もあります。ただ、二つの色を両立させようとしてバランスが悪かったり、ダラダラとした映画になったりするよりは、開き直って片方の要素を強く押し出すというのは正しい判断と言って良いでしょう。スピードを重視するならこのスタイルが最適解かと思います。登場人物が皆、程よく疑わしいのも楽しいです。