春画先生 (2023):映画短評
春画先生 (2023)ライター3人の平均評価: 4.3
心のリミッターを外される/外すことの快感。
正直、これほど変態的でエロティックな純愛映画は稀である。『月光の囁き』を実質的デビュー作とする塩田監督作品の世界観が成熟した形で戻ってきた感。春画にのめり込む先生と、弟子同然となる女性との話なのだが、その台詞一つ一つに日本的エロの考察がちりばめられているのに大納得。例えば「歌麿はひたすら女とまぐわい続けて春画を描いた。北斎はまぐわう時間を惜しんで春画を描いた」等々。言ってみればこの二人の関係は歪んだ関係でNTR(寝取られ)のマゾヒスティックなところに繋がるのであるが、そこに永遠のロリータたる安達祐実が絡んでくるところも面白いところ。しかも全てが笑い絵へのシンパシーと愛情に溢れているのだ。
エロくて笑える奇妙な偏愛
『月光の囁き』で注目を浴びた塩田明彦監督のオリジナル作品らしい、かなり歪んだオトナのためのラブストーリー。アカデミックな要素を持つ春画はあくまでも話の導入であり、師匠と弟子が織りなす春画のようにエロくて、笑える奇妙な人間関係が次第にツボっていく。これまで「バイプレイヤーズ」のジャスミン役の印象が強かった北香那が、「きのう何食べた?」の賢二と異なるアプローチで“春画先生”を演じる内野聖陽に全力でぶつかっていく姿がとにかく凛々しい。さらに、ブーメランパンツ姿の柄本佑や美魔女すぎる安達祐実といった助演陣もサポートもあって、かなりの難役をモノにした女優魂に、★おまけ。
偏愛(変な愛)の物語
R-15指定を逆手にとって包み隠さず春画を見せるというコロンブスの卵的な一作。ただ、そこで終わらず、偏愛という言葉を体現したような究極に変てこりんな映画に仕上がりました。タイトルロールである”春画先生”を演じる内野聖陽の突飛なキャラクターは映画の推進力となっています。ヒロインの北香那の全力でぶつかります。脇を固める柄本佑と安達祐実も戯画化された極端な役どころを好演、各キャスティングがそれぞれベストキャスティングと言える演技を見せています。塩田監督がこういう映画を撮ってくるとは嬉しい驚きです。