ゴールデンカムイ (2023):映画短評
ゴールデンカムイ (2023)ライター4人の平均評価: 4.3
実写版『子連れ狼』シリーズの如く海外でも人気が出るかも
シリーズの導入部として充実した作劇。漫画の世界をいかに3次元の実写へ変換するかは、日本映画がずーっと向き合っているテーマだが、本作は一つの解を見せている。なかなかにエグい原作にも若山富三郎、勝新太郎という兄弟リスペクトがあったが、まるで往時の「勝プロ」が手がけたような、常軌を逸したエキセントリックな描写に回帰しているのである。
事実、かつて「東宝配給」「勝プロ製作」という提携が劇画ブームと連動し、実写版『子連れ狼』シリーズ(72〜74)などで気を吐いていた。不死身の杉元役、主演の山﨑賢人や脱獄王・白石役の矢本悠馬、アイヌの少女アシㇼパ役の山田杏奈まで、そんな「勝プロ」娯楽路線の匂いがする。
128分の壮大なる序章
『キングダム』の成功ありきの企画なのは間違いないが、今回も再現率高いキャスティングに加え、下村雄二アクション監督による『レジェンド・オブ・フィスト 怒りの鉄拳』オマージュな日露戦争における杉元無双バトルから、しっかりブチ上がる! その後も、殺伐とした物語が続く中、いちばん懸念していた久保茂昭監督の演出に関しては、原作を忠実に描くことに徹しており、ドラマパートは『ハイロー』の比較にならないほど濃厚に。グルメパートでの「オソマ」エピソードも、しっかり笑えるものに。これから金塊争奪戦が面白くなる前に幕は閉じてしまうが、原作ファンも納得できる“128分の壮大なる序章”として見応えあるものになっている。
大型企画始動!!
東宝による大型企画が始動しました。『HIGH&LOW』の久保監督と『キングダム』の黒岩脚本。そして主演の山﨑賢人以下動ける面々が揃ったアクション超大作。本格的な北海道長期ロケによる”ホンモノ感”はなにものにも代え難い説得力を与えてくれます。キーパーソンを演じる玉木宏の怪演と舘ひろしの存在感は映画をきっちりと引き締めてくれました。やはり『キングダム』の成功と比較してしまうところがありますが、こちらも十分、可能性を感じさせる力作でした。ビジネス面から考えれば、ここからシリーズ化をさせたいところでしょうが、さぁどうなることでしょう。色々な部分で楽しみです。
寒くても、倒れそうでも、這いつくばって、生きろ
原作を読んでいない前提で話をさせてもらうが、まっさらな状態だったこともあり、ワクワクしながら見入った。
“弱いやつは食われる”という絶対ルールの下、極寒のサバイバルと、金塊探しの攻防が絡み物語を突き動かす。主人公の元兵士は生命力を体現し、相棒となるアイヌの少女は自然との共存の倫理を象徴。そんなふたりのコンビネーションはドラマを面白くするだけでなく、現代を生きるために必要なものを伝える。
映画を見てから原作やアニメに触れたが、山崎賢人と山田杏奈の共演は、これらに比べて血の通ったものに映り、実写映画化の意義が確かに見いだせる。『キングダム』に負けず劣らず、早く次が見たい!